最後だけ百万点の問題になって
めちゃくちゃ良い。上記の歌が一番好きだった。
きっと忘れないだろう
ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす晩年のあなたに窓をとりつけて日が暮れるまで磨いていたいそれは世界中のデッキチェアがたたまれてしまうほどのあかるさでした『えーえんとくちから』笹井宏之
笹井宏之という歌人の影響は非常に強く、この御殿山みなみの歌集にも見ることができると思う。
笹井宏之は夭逝してしまったが、こんにちまで大きな人気を誇る歌人の名前である。
たまたま構造の似ている短歌を見つけてしまっただけかもしれないとも思うが、しかし笹井と御殿山の歌に共通しているのは、やわらかな言葉遣いの利用と、五七五七七の定型をかなり厳格に守っているという点である。両者に端正な響きの歌が多いのは、そういった共通点から来ているのではないだろうかと思う。
初めて短歌にふれたひとが読んでもこの二人の歌がとても面白いと思えるのは、定型が丁寧に足がかりとして用意されており読みやすさが担保されているからだろう。そして連作であっても一首単体で完結する歌が多いからだ。
そういった共通点を踏まえたうえで、御殿山みなみが『モモモノローグ』の中で切り開いている地平とは、そこにユーモアを搭載しているという点にある。笹井の歌が「儚さ」のようなものを感じさせるのに対して、御殿山の歌は儚さを感じさせるようなものではなく、もうすこし足元がしっかりしている主体像が見えてくる。
最後だけ百万点の問題になってあなたをささえていたい『モモモノローグ』御殿山みなみ
そのユーモア自体も見どころであるし、ユーモアが逆説的に浮き彫りにする真剣さのようなものもある。
「あなたをささえていたい」という願い自体は、ありふれた感情だ。そこに「最後だけ百万点の問題」という、クイズ番組のお約束のような語彙をぶつけることで、歌の輪郭は一気にあざやかになる。ここにはクスッと笑えるような感触もあるが、しかし感動的だと一読して読者は思うだろう。
百万点の問題とは、それまでの劣勢をすべて覆す一発逆転の希望そのものである。現実にはありえないほど都合のいい、絶対的な救いだ。そんな突飛で現実離れした、しかしそこぬけに明るい言葉を引っ張り出してくることで、ただ「支えたい」と口にするよりもずっと強く、どんなときもあなたの味方でいたいという真剣さが立ち上がる。ユーモアという回路を通すことで、かえって言葉を尽くした切実さが伝わる点に、この歌の感動がある。
