まず、この二首
みちのくの母のいのちを一目見ん一目みんとぞただにいそげる斎藤茂吉『赤光』
死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる斎藤茂吉『赤光』
鑑賞:並べると、時間の流れが発生する
二首とも、茂吉の「死にたまふ母」という連作に入っている歌です。この連作は、母が危ないという知らせを受けて故郷の山形へ向かうところから、母を看取り、そのあとの日々までを、全59首の歌でたどっています。
一首めは、まだ旅の途中。「一目見ん、一目見ん」と繰り返しながら、ひたすら急いでいます。
二首めでは、もう母のそばにいて、添い寝をしている様子です。
一首ずつ読んでも心に残る歌ですが、並べて読むと、急いで帰ってきたこと、間に合ったこと、でももう長くないこと、という時間の流れが見えてきます。
二首めの「しんしんと」の静けさは、一首めの焦りがあるからこそ、いっそう深く感じられるのです。
連作の読み方
- タイトル(題)を見る。連作には、ふつう題がついている
- 前半の歌と後半の歌を読み比べてみる
- 時間、場所、気持ちがどう動いていくかを追う
- 一首では意味がわかりにくい歌も、前後の歌に手がかりがあることが多い
連作を書いてみる
時間の流れに沿って歌をつくると、連作を書きやすくなります。
たとえば「朝、昼、夜」や「行き、着いたとき、帰り」のように、時間で三首に分けると、まずは大まかな流れをつくることができます。
歌を並べるときは、茂吉の連作のように、一首ごとに場面を一つにしぼります。そのうえで、一首めと最後の歌に何か変化をもたせてみましょう。あいだに入れた歌が自然に流れをつくってくれることもあります。あるいは、場面と場面のあいだにはまりそうな歌をいくつかつくってみるのもよいでしょう。
連作は「歌の並びで、時間と気持ちを動かす」もの。一首ごとで読む、連作のなかでは、新しい顔を見せる。
次に読みたい一冊
二〇二〇年の空気を、論理では説明できない記憶として連作に残した歌集。土岐友浩『ナムタル』。歌集の中の見出しごとに、連作の流れを味わえます。
百年後
土岐友浩『ナムタル』
短歌連作は論理で説明できない記憶を残すには、ぴったりの形式なのかもしれない。
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