出版社ごとの特徴を知っておくと、次の一冊を探すときの手がかりになります。
独立系の出版社
小さな出版社が、短歌の本の中心にいます。装丁にこだわった本や、新しい歌人の第一歌集が多く、ここから歌集を読みはじめる人もたくさんいます。
- 書肆侃侃房(福岡):「新鋭短歌シリーズ」(上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』など)をはじめ、多くの歌人の歌集を出しており、短歌ムックとしても『ねむらない樹』を持っている。新人賞「笹井宏之賞」を主催(公式サイト)
- ナナロク社(東京):2008年創業。岡本真帆『水上バス浅草行き』や、木下龍也・岡野大嗣『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』を出している。歌集をまだ出していない人から100首を募り、木下龍也と岡野大嗣が選んで歌集にする「あたらしい歌集選考会」も開いている(公式サイト)
- 左右社(東京):歌人100人の100首を集めたアンソロジー『海のうた』『月のうた』『雪のうた』『花のうた』などの〈〜のうた〉シリーズ(累計3万部超)や、歌集、短歌の入門書を出している(公式サイト)
- 港の人(鎌倉):鎌倉の出版社。詩歌や文学の本を中心に出し、装丁でも高い評価を得た堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』もここから(公式サイト)
- 青磁社(京都):歌人の永田淳が経営を行っており、歌集・句集・詩集などを出している。千種創一『砂丘律』などが有名(公式サイト)
- 砂子屋書房(東京):歌集・詩集を中心に出し、「現代短歌文庫」を刊行。ウェブで一首鑑賞「日々のクオリア」を連載している(公式サイト)
- ふらんす堂(東京):俳句・短歌・詩・エッセイを中心に出している出版社。ウェブでは歌人の「短歌日記」を連載している(公式サイト)
- 六花書林(東京・神保町):歌集や歌書を専門に出している出版社。丁寧な造本の歌集を数多く手がけている(公式サイト)
- 典々堂(東京・神田駿河台):髙橋典子さんの出版社。(公式サイト)
- いりの舎(東京・下北沢):短歌新聞社にいた玉城入野さんが開いた、詩歌・文芸の出版社。歌集や「いりの舎文庫」、月刊『うた新聞』を出している(公式サイト)
短歌の雑誌も出している出版社
歌集をたくさん出しながら、短歌の雑誌(総合誌とも呼ばれます)も出している出版社です。雑誌の新人賞を主催しているところもあります。
- 角川文化振興財団(KADOKAWAグループ):歌集・歌書を毎月出し、月刊誌『短歌』(角川短歌)も出している。角川短歌賞を主催(公式サイト)
- 短歌研究社:歌集を出し、雑誌『短歌研究』も出している。短歌研究新人賞、現代短歌評論賞などの賞を主催。山階基『夜を着こなせたなら』、廣野翔一『weathercocks』もここから(公式サイト)
- 現代短歌社:雑誌『現代短歌』を出している京都の出版社。歌集の公募「現代短歌社賞」を主催(公式サイト)
- 本阿弥書店:短歌の雑誌『歌壇』と俳句の雑誌『俳壇』を出している。平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』を2021年に刊行。歌壇賞を主催(公式サイト)
- ながらみ書房:雑誌『短歌往来』を出している。ながらみ書房出版賞を主催(公式サイト)
大手の出版社
大手の出版社も、文庫や話題の歌集を出しています。
- KADOKAWA:睦月都の歌集『Dance with the invisibles』や、穂村弘が読者の歌を選ぶ『短歌ください』シリーズ(角川文庫)を出している。グループの角川文化振興財団からは、竹中優子『輪をつくる』も出ている(公式サイト)
- 河出書房新社:俵万智『サラダ記念日』の版元。2026年4月に河出文庫で新装版が出た(公式サイト)
- 講談社:文芸誌『群像』の短歌投稿欄を本にした、木下龍也『夜をゆく舟が他にもあることを教えるために歌はひかった』(2026年)を出している(公式サイト)
- 文藝春秋:大森静佳の歌集『ヘクタール』を出している(公式サイト)
- 筑摩書房:ちくま文庫で、歌集の文庫版を出している。笹井宏之『えーえんとくちから』、千種創一『砂丘律』、東直子『春原さんのリコーダー』『青卵』など。手に取りやすい文庫で、名歌集を読める(公式サイト)
おすすめの探し方
まずアンソロジー(たくさんの歌人の歌を集めた本)で好きな歌人を見つけるのがおすすめです。
- アンソロジーを一冊読む:『短歌タイムカプセル』(東直子・佐藤弓生・千葉聡編、書肆侃侃房)は、歌人100人超の歌を一人二十首ずつ集めた本。『桜前線開架宣言』(山田航編著、左右社)は、1970年以降に生まれた歌人の歌を集めた本。
- 気になった歌人の歌集を調べる:「この人の歌がいい」と思ったら、その歌人の歌集の名前と出版社を調べる。
- 出版社からたどる:その出版社のウェブサイトで、同じシリーズのほかの歌集も見てみる。シリーズの歌集は判型や装丁がそろっていて、本屋の棚でも見つけやすい。たとえば書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズは本屋でも見つけやすく、さまざまな歌人に出会うよい場所となるでしょう。
出版社のウェブストアで直接買えることもあります。本屋で探すときは「短歌の本はどこで買う?」の記事も読んでみてください。
気になった歌集は、早めに買おう
歌集は刷る部数が少なく、500部しか刷らないなどといったこともざらにあります。出版社によっては、品切れや絶版になっている歌集がたくさんあります。気になる一冊を見つけたら、早めに手に入れておくのがおすすめです。手に入らないときは、図書館で探してみましょう。
ここが入門ポイント
- 短歌の本は、独立系の出版社、短歌の専門の出版社、大手の出版社から出ている。
- アンソロジーで好きな歌人を見つけ、その歌集の出版社からたどると、次の一冊が見つかりやすい。
- 絶版になることも珍しくないので、気になった歌集は早めに買おう。
この記事にない出版社もあります。ほかにも載せてほしい出版社があれば追加しますので、お問い合わせからお知らせください。
参考にしたページ
出版社の公式サイトのほかに、次のページを参考にしました。
- ナナロク社の木下龍也さんの本について(現代ビジネス)
- あたらしい歌集選考会について(公募ガイド)
- 左右社〈〜のうた〉シリーズについて(@Press)
- いりの舎の開業について(下北沢経済新聞)
- 第42回現代短歌評論賞(Japan Design Net)
- 第14回現代短歌社賞(公募ガイド)
- 『短歌タイムカプセル』(版元ドットコム)
次に読みたい一冊
書肆侃侃房から出た一冊。椛沢知世『あおむけの踊り場であおむけ』。

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世界を移すこと
椛沢知世『あおむけの踊り場であおむけ』
食べることはわたしたちにとって喜びであるだけでなく、食物を異化し、自分の身体そのものにしていく行為に他ならない。言い換えれば、世界の一部を自分へと移し替えていく運動であり、主体が生成されていく最も具体的ともいえるプロセスなのだ。
推薦文:武田ひか 推薦文を読む →